カブハル

なぜやろなあ

牛

68.なぜFIREは失敗するのか

最近だとFIREっていうんですね。昔はアーリーリタイアって言ってました。

さてFIREした人のブログを見るとたまに、金銭的にはなんの問題も発生していないのに「FIREしなければよかった。失敗した」という人がいます。なぜFIREに失敗する人がいるのでしょうか?今回はその話をします。

まずそもそも人間が幸福を感じる源泉は

の2つにあります。

逆に言えば、人間は「悪い人間関係」もしくは「孤独」なときに不幸を感じ、「自分の人生を自分でコントロールできていると言う感覚がない」時に不幸を感じるのです。

そして、なぜFIREに失敗するかというと、FIREすることによってこの2つが失われる場合があるからです。

まず、そもそもなぜ人はFIRE(アーリーリタイア)に憧れるのでしょうか?それは、現在の会社に通う人生、学校に通う人生に「自分の人生を自分でコントロールできているという感覚」が持てないからです。つまり明確に言語化して意識したことはないかもしれませんが、基本的に人は「自分の人生を自分でコントロールできているという感覚」を得たくてFIRE(アーリーリタイア)を目指すのです。

さて、実際にFIREを行うと何が起こるのでしょうか?

まずFIREをして会社を辞め、どこにも所属していない状態になると、人間関係が希薄になります。そのため「良い人間関係(量より質)」が失われます。

なので、同居人がいる人に比べて、一人暮らしの人の方が(孤独になって不幸を感じる可能性が高いので)FIREに失敗する可能性が高いです。

次に、FIREした直後は旅行したり映画見たりとある程度毎日を楽しむのですが、問題はその後です。「さあ、次は自分の人生をどうしよう?どの方向に自分の人生を進めよう?」というときに無限の選択肢を前にして、人は次の目的を決定することができないのです。つまり「自分の人生を自分でコントロールできているという感覚」が失われます。

選択に関する本(例えば選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義)を読んだことがある方は分かると思いますが、人間は限られた選択肢の中からであれば選択することができるのですが、選択肢が多すぎると選択することができなくなるのです。

もちろん、あなたは今までの人生の中で人生の選択肢を選択してきたと思います。例えばどの学校に進学するかや、どの会社に就職するかなど。でもその選択肢は「まず学校に進学することを前提として」つまり限られた範囲(学校を選べばよく、就職すべきかや旅に出るべきかまでは選択肢として考慮に入れなくてよかった)から選んだ経験、「まず就職することを前提として」つまり限られた範囲(会社を選べばよく、もう一度学校に通うべきかや、旅に出るべきか、無職になってみるべきかを考慮に入れなくてよかった)から選んだ経験しかないのです。

つまり人生経験として真の意味で無限の選択肢から選択すると言う経験をほとんどの人がしたことがないのです。

FIREしたら真の意味で本当に何をやってもいいのです。本当の意味で無限の選択肢が目の前に現れます。「一日中寝て」いてもいいし、「興味のあることを独学」してもいいし、「学校に進学」してもいいのです。「図書館に行っ」てもいいし、「カフェに行っ」てもいいし、「昼間から酒を飲」んでもいいのです。「漫画喫茶に泊まっ」てもいいし、「ハワイに遊びに行っ」てもいいし、「路上生活をしてみて」もいいのです。なんなら「バイトしてみて」もいいし、「就職してみてもいい」し、「習い事を習って」もいいのです。「どこかの大会に出場してみて」もいいし、「世界一周旅行をしてみて」もいいし、極端なことを言えば「死んで」もいいのです。

そして人間は無限の選択肢を前にして自分の生き方を選べなくなり、「自分の人生を自分でコントロールできているという感覚」が失われて、自分は幸せだと感じられなくなり、FIREに失敗した、と感じるようになるのです。

もしあなたが現在「FIREを目指して努力をしている」なら、あなたは今人生がとても楽しいと思います。なぜなら「FIREを目指して努力している状態」というのは「自分の人生を自分でコントロールしているという感覚が得られる」ものだからです。FIREに成功すればあなたはあなたの力であなたの人生を変えることになるので、これほど「自分の人生を自分でコントロールしているという感覚が得られる」ものはありません。ですが、問題はFIREした後に起こると言うことを覚えていてください。

さて、実は私も今FIREのような生活をしているのですが、実際にFIREをしてみてどうかというとめちゃくちゃ楽しいです。多分、今までの人生の中で今が一番楽しい時です。

FIRE直後は、不幸ではなくなったけど幸福でもないな、と言う不思議な感覚の状態でした。

私、働いている頃から人間関係が希薄なのと、実家暮らしで両親と住んでいるので、人間関係に起因する不幸はそれほど感じませんでした。両親と仲良いし。

FIRE後には私も無限の選択肢を前にしてどうしようかな、と思ったのですが、とりあえずこれを一旦の目的にするかと言うものを作って、自分の人生をコントロールしていくうちに、段々と無限の選択肢から自分の人生を選べるようになってきて「自分の人生を自分でコントロールできているという感覚」も手に入れて、あとは大体ずっと「人生楽しいなー」と言う気持ちで生きてます。

なので、この文章を書いたのはFIREに反対するため、と言うわけではなくて、FIRE後に多分こんなことになるから、そこ気をつけてね、と言う話です。

次回、69.理想主義に死ぬな。現実主義に生きろ。